「サブスクリプション・マーケティング」—— 月額・年額払いビジネスに関わるすべての人のための“教科書”的1冊


「サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方」という本を読みました。

ソフトウェアを始め、「買い切り型」ではない「購読型 = サブスクリプション型」のビジネスが近年増えています。

本書では、「サブスクリプション型ビジネスにおいて、売り手は買い手とどう向き合うべきか」が語られます。

結論から言うと、かなり上手くまとまった良書だなと思いました。教科書的といいますか。月額・年額契約などのサブスクリプション型ビジネスに関わる方なら、マーケティング系の部署でなくても読むべきでは、と思いました。

個人的に面白かったトピックはこのあたり。

  • サブスクリプション型では「契約後のマーケティング」が重要
  • マーケティング部以外の「サブスクリプション・マーケティング」への理解・協力が不可欠となる
  • 価値観や使命に共感して、商品・サービスを利用し続ける人が増えている

サブスクリプション型では「契約後のマーケティング」が重要

商品の必要性を顧客から引き出し、契約してもらうまでの計画を練り、実行していく——。

マーケティングといえば、いまだにそのようなイメージが根強いと思います。つまり「従来のマーケティングは契約までがすべてだった」といっても過言ではないでしょう。

しかし、この本では一貫して、「サブスクリプション型ビジネスにおいては、むしろ契約後のマーケティングが重要になる」と主張されます。

サブスクリプションとは双方向の関係であり、また、顧客は似たような顧客ばかりではない。伝統的な物販モデルでは、商品を、その商品があまり合いそうにない客に売っても大きな問題ではなかった。返品が可能だが、返品する人はほとんどいなかった。
サブスクリプションモデルでは、顧客に顧客であり続けてもらうことが非常に重要である。顧客の獲得、維持にかかる費用の元をとるには何度もの契約更新が必要なことを思い出してほしい。

サブスクリプション型ビジネスのマーケターとして意味のある仕事をするには、収益の推移を注視し、契約後のマーケティングに力を入れなければならない。


「契約して終わり」ではなくなることを表した、サブスクリプション型マーケティングファネル図

個人的には、現在「新規契約の約90%がサブスクリプション契約の商品」をプロモーションしていく立場のため、「当たり前だと思ってた」というのが正直な感想です。

しかし、買い切り型ビジネスで戦ってきた方だと、この感覚はかなり新鮮なんだろうなという発見になりました。

マーケティング部以外の「サブスクリプション・マーケティング」への理解・協力が不可欠となる

マーケティングと聞くと、「マーケターと呼ばれる人だけが関係ある話では」と思いがちです。

しかし、むしろ「サブスクリプション型ビジネスにおいては、さまざまな部署の理解と協力が必要である」というのが本書の主張です。

なぜか。その理由としては、大きく分けて、

  1. 全社として重視すべき事柄が変わるから
  2. さまざまな部署でマーケティング的アプローチが必要になってくるから

の2つが挙げられます。

顧客との関係が変わると、マーケティングチームには何が求められるようになるのか。

・販売(登録、あるいは契約)前に価値を実証し、信頼を得る
・契約後は、価値の育成信頼の維持に努める。

これを推し進めていくのはマーケティングチームだけではない。マーケティングの担当者がめざすべき方向を決めることはあるだろうが、顧客との関係は全社を挙げて築いていくものである。価値を実証し信頼を維持するには、マーケティング、カスタマーサクセス、カスタマーサポート、営業、サービスなどさまざまな部門間の協力が必要である。

カスタマーサクセスチームの個々のマネジャーが少数の顧客に対して必要に応じたサポートをすることはよくある。しかし、顧客が数万人になると、個別の対応をするのはむずかしい。
(中略)
担当者をどんなに増やしても、ハイタッチ〔人間的な温かみのある〕な個別対応はできません。マーケティングに通じた人物が必要になります

サブスクリプション型ビジネスでは、売る前から売ったあとまで、顧客との接点が存在し続けるわけですから、当然といえば当然です。

引用内にある通り、マーケティング、カスタマーサポート、営業 —— そして評価の基準も変わるという意味では人事部ですら、一定以上の理解が求められるかもしれません

また、「部門を超えた理解・協力の体制をいかに築くか」もいくつか提案されていたのがよかったです。見出しを中心にいくつか抜き出すと、こんな感じでした。

目的を定めた部門横断型チームを設置する

他の部門で見習いをする
これは新人研修の一環として行ってもよいだろう

(部門を超えた)会議への出席を求める

価値観や使命に共感して、商品・サービスを利用し続ける人が増えている

サブスクリプション型の商品・サービスを顧客に使い続けてもらうために、本書では主に「顧客が商品・サービスを効果的に利用し、成功するための学習法や情報、サポートなどを提供しなさい」と説かれます。

その提供すべき内容として挙げられているなかで、少しユニークなのが「価値観と使命」。

「売り手の価値観や使命に共感して、商品・サービスを利用し続ける買い手が増えている。だから売り手は、自らの価値観を発信していきなさい」という主張があるのです。

自分が取り引きをしている会社の価値観を知りたいと思う人が増えている。顧客との関係を強化しなければならない企業は、自社の価値観がどのようなものかを理解し、それを明確にすることを求められている。

その理由が、下記です。
買い手は、共感できる使命や価値観を持つ企業の商品を購入することで、それらに共鳴している実感を得られるから」というわけですね。

サブスクリプションの申し込みをすると、会社はその顧客のストーリーの一部となる。顧客と会社が同じ価値観をもっていれば、顧客のストーリーのなかで会社の果たす役割が大きくなる。顧客と価値観を共有する会社は、持続的なロイヤリティを獲得することができる。

また、サブスクリプション・マーケティングは、前述の通り、部署を超えて進める必要があります。

そのなかで、使命や価値観を確実に顧客と共有していくためには、まず社員がそれらを認識し、共感することが不可欠なのは、言うまでもありません。

あなたの会社の歴史と使命はどのようなものだろうか。目標と価値観を内外の人々に明確に伝えることができていない企業は、まず、社員の心を1つにする共通の価値観を見つけ出さなければならない。

理念やビジョンを重視する企業が台頭したり、コーポレートメッセージの伝え方に注目が集まったりする近年に、かなり納得感が出てきますよね。

マーケターでなくても読んでほしい

そんなわけで「こんな人に読んでほしい」と思いました。

  • マーケター(販売責任者からプロモーション担当者まで)
  • サブスクリプション型ビジネスを提供している / これから提供する企業ではたらく、マーケティング部以外の販売職(営業部、カスタマーサポート部など)

マーケターでなくても、特にサブスクリプション型ビジネスに関わるならぜひ、という感じです。


そもそもの原書のできが良いのか、翻訳が上手いのかは分からないのですが、いずれにせよ「非常に読みやすい」のも魅力的でした。


よっしー
1995年大阪生まれ 音楽とインターネット育ち。サイボウズ マーケティング/製品プロモーション。 詳しくはこちら。