「怒ることと叱ることは同義である」 アドラー心理学の教育観が面白い

幸せになる勇気」(岸見一郎・古賀史健 著)を読みました。

世界的にはユングやフロイトに次ぐ心理学の研究者として有名なアドラー。そんな彼の思想を、アドラー心理学を”哲人”と”青年”の対話を通して説いていく1冊です。 前作「嫌われる勇気」は、2014年のAmazonベストセラーになりました。

  2014年Amazonベストセラー「嫌われる勇気」を読んで:自由になるには、幸せになるには、僕らはどう生きれば良いのか。 | よしオト。

 

 

本書はその続編となります。青年が「理論ではなく、実践の話を」と哲人に求めるシーンもあるように、前作と比べると”実践編”と言えるでしょう。

「怒ることと叱ることは同義である」

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前作「嫌われる勇気」で哲人が語ったアドラー心理学に感銘を受け、その教えをもとに教師になり、次世代にこの考えを伝えようと奮闘した青年。

本作のストーリー(?)は、そのアドラー心理学の実効性のなさ、教室での通じなさに絶望し、再び哲人のもとにやってき、アドラー心理学の真理とその実効性について議論を行うというものになっています。そんなわけで、序盤を中心に、教育(特に学校教育)での具体的なシーンを想定した内容が多いです。

その中でも個人的に目から鱗だったのが、「怒ることと叱ることは同義である」という主張。

一般的に、これらは異なるものとして捉えられていると思います。青年も同様の反論を唱えます。

青年 怒りとは感情を爆発させることであり、冷静な判断ができなくなることです。その意味で叱るときのわたしは、ひとつも感情的になっていません! 逆上しているのではなく、計算ずくで、冷静に叱っている。我を忘れて激昂する人と一緒にしないでいただきたい!

そうですよね。こんな怒り調子ではありませんでしたが、確かに僕も同じことを思いました。

しかし面白いのが、哲人、すなわちアドラー心理学が唱えるこの考え方。

哲人 そうなのかもしれません。いわば実弾の装填されていない、空包の銃だとおっしゃるのでしょう。しかし、生徒たちにしてみれば、銃口を向けられている事実は同じなのです。そこに装填されたものが実弾であろうとなかろうと、あなたは銃を片手にコミュニケーションをとっているのです。

非常に分かりやすい例えです。つまり、子どもたちからすればそれは同じものであって、怒る側/叱る側の理論は通らない。納得がいきます。 

そしてそれら叱責という「暴力」を、アドラー心理学は全面的に否定します。子どもの自立的な学びを妨げ、その場しのぎにしかならない、教師が安心できるだけの行為であると主張します。

哲人 荒れる学級に手をこまねいたあなたは、強権的な手段に出てしまう。力によって、恐怖によって、有無を言わさず従わせようとする。たしかに、一時的な効果は期待できるかもしれません。耳を傾けてくれるようになったと、安堵するかもしれません。しかし……。

青年 ……こっちの話など、聞いちゃいない。

哲人 ええ。子どもたちは「あなた」ではなく、「権力」に服従しているだけです。「あなた」のことを理解しようとは、微塵も思っていません。耳を塞いで目をつぶり、怒りの嵐が過ぎ去るのを待っているだけです。

哲人  叱責を含む「暴力」は、人間としての未熟さを露呈するコミュニケーションである。このことは、子どもたちも十分に理解しています。叱責を受けたとき、暴力的行為への恐怖とは別に、「この人は未熟な人間なのだ」という洞察が、無意識のうちに働きます。

教育に関わる人なら、1つの知見として読んで損なし

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もちろん、アドラー心理学は物事の1つの見解に過ぎません。本書でも最後にはこう語られています。

子どもたちと、あたらしい時代を生きる仲間たちと語り合ってください。そしてできれば、アドラーの思想をそのままに継承するのではなく、あなた方の手で更新していってください。

アドラーは不可侵の教祖ではなく、われわれと同じ地平に存在した、ひとりの哲学者です。……時は流れます。あたらしい技術が生まれ、あたらしい関係が生まれ、あたらしい悩みが生まれます。人々のコモンセンスは時代にあわせてゆっくりと変化していきます。われわれはアドラーの思想を大切にするからこそ、それを更新していかなければならない。原理主義者になってはならない。これは、あたらしい時代に生きる人間に託された、使命なのです。

ただ、冒頭で語ったユングやフロイトの教育観とは、また一線を画す思想であることは事実です。 人によっては反論したくなる部分も多々あるのでしょうが、そういった点も含めて、教育者ならきっと面白い学び、知見を得られると思います。教育に絡めた話は、今回挙げた「怒ること/叱ること」以外にも展開されますし。

もちろん教育者じゃなくても、自分の思考を省みる参考にしたいといった人にもお勧めです。 気になった方は、前作「嫌われる勇気」と併せて、是非どうぞ。

よっしー
1995年大阪生まれ 音楽とインターネット育ち。 詳しくはこちら。