エヴァンジェリスト、戦略PRがカギの時代。高野 修平さん著「始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング」を読みました。


 

実はこの手の音楽マーケティングに特化した本、初めて読んだんですが、1冊目にはちょうど良かったです。

読んだきっかけ

フリーランスとして音楽でメシを食う代表(個人意見)のこおろぎさんが前々からめちゃおすすめしていたから。その割には今さらかよという感じなんですが。

 

値段(Kindle版だと1,500円)の割にボリュームが半端じゃないので、今回は僕がこの本から読み取った、

  • エヴァンジェリスト(伝道者)の重要性
  • 戦略PRの重要性…マスメディアもソーシャルメディアも組み合わせよ
  • PRと広告は別物

という3点についてまとめたいと思います。

エヴァンジェリスト(伝道者)の重要性

まずエヴァンジェリストとは何か。

”自ら周りに推奨してくれる人”をエヴァンジェリスト(伝道者)と言う

これだけでは「エヴァンジェリスト=コアファン」になってしまいそうなんですが、著者である高野さんはさらにこのように定義しています。

コアファンはアーティストや楽曲の大ファンであるが、周りに推奨しようとはしないのに対して、エヴァンジェリストはコアファンでありながら、友人、知人へ積極的に推奨する違いがある。

つまり「他人に薦めたくてたまらないほどハマっているコアファン」ということですね。

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で、このエヴァンジェリストの熱量(ファン度とでも言いましょうか)を上げ、また他人に薦めやすい状況を設計することが、何より重要と、本書では訴えられています。何故か。

それは、エヴァンジェリストは信頼のあるソースとして、強い熱量を持って、リアルでもソーシャルメディアでも口コミを行ってくれるから。当然、発信側直々の言葉より信用できますよね。

エヴァンジェリストがリコメンドする際には、強い「熱量」が付与される。無関心層が「WOW」と思うTalk-ableな内容とエヴァンジェリストの「熱量」によって、マンガやアニメがさらに伝搬されていく。

信頼する人からの強力な推奨であれば、教えられた側も時間を割く。検討する。興味を持ってくれる。このエヴァンジェリストの活動が、地味ではあるが確実にムーヴメントを起こす基礎となる。

で、このエヴァンジェリストが最大限の効果を持って口コミしてくれるためにやることの1つが、最近は当たり前になった音源・MVの無料公開なわけですね。これ何も考えずに適当にやってたら何の意味もなさそう。

戦略PRの重要性…マスメディアもソーシャルメディアも組み合わせよ

しかし、そんなエヴァンジェリストによる伝搬にも弱みがあります。

エヴァンジェリストを通した伝搬の強みと弱みは以下になる。

  • 強み:信頼に足る影響力からの推奨
  • 弱み:影響を及ぼす時間の長さと広がりの範囲が狭い

当然ながら、基本的には個人→個人といった単位での伝搬になるので、こういった弱みが出てくるわけですね。

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というわけでこれを補う形で、マスメディアも組み合わせたPRを考える必要がある。インターネットが台頭した時代ですが、マスメディアは死んだわけではない。むしろソーシャルメディア(そこでの発信の主体となるエヴァンジェリスト)もマスメディアも組み合わせた、戦略的なPRを考えていく必要があるわけです

PRからのニュースで伝わる音楽の伝搬の強みと弱みを整理する。

  • 強み:不特定多数へ広げることが出来る可能性がある
  • 弱み:ニュース性のみが先行して楽曲やアーティストに興味が落ちない可能性がある

PRと広告は別物

しかしここで注意したいのが、「PR=広告を掲載すること」ではないということ。日本では混同されがちですが(この理由も本書に書かれています)本来は別物なのです。

これに関しても興味深い説明があります。

広告はメディアを買います。(中略)テレビCM、雑誌広告、デジタル広告など、メディアが売っている商品としての枠を、お客さんが土地のように買うわけです。その土地で、倫理上問題がない範囲でなら、なにをしても良い。

PRの場合は(中略)「情報の取引」なんですね。メディアの枠は買わなくて、メディアが伝えたいこと、有用だと思うことを、提供する。メディアとの金銭のやりとりは、基本的にありません。

広告はお金でメディアの枠を買う。PRは(そのメディアが面白くなる、担当者が面白いと思う)情報でメディアの枠を買う」といった感じですね。それ故に、

  • 広告:発信側は枠内であれば、自分に都合の良い情報だけを自由に掲載できる。ただし、受信側もそれは知って受信する。
  • PR:メディアが書きたいように書くので、発信側が制御できる範囲は限られる。しかし「1度メディア(ある意味では第三者)の目を通しているので、ある程度は信用していい」という形で受信してもらいやすい。

といった違いも出てくるわけです。

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photo credit: Mega-Justice via photopin (license)

マスメディアでの(広告ではなく)ニュースとしての掲載もそうだし、ソーシャルメディアで(エヴァンジェリスト等による賛同も、逆に批判も含めて)話題に昇らせることも、PRによる結果に当たると言えるでしょう。

マスメディアとソーシャルメディアの関係同様、PRも広告もどちらも適材適所で実行していく必要がありそうです

終わりに

ここでまとめたのは本書のほんの一部で、他にもかなり面白いことが書かれています。きゃりーぱみゅぱみゅやONE OK ROCK、サカナクション、ダフト・パンクの分析など、例を挙げての説明も多く、めちゃ分かりやすいです。

音楽で生きていきたい人もっと読んでもいいと思う。1冊目に読む本にもちょうど良いと思いました。


よっしー
1995年大阪生まれ 音楽とインターネット育ち。サイボウズ マーケティング/製品プロモーション。 詳しくはこちら。