”原理”が分かれば未来が読める:「未来に先回りする思考法」とは一体何か


もちろん、例えば10分後に憧れの〇〇先輩にばったり会うかもしれないとか、1年後の今日の天気が分かるとか、そんな未来予知は今のところ誰にもできやしない。

しかし「ITなどの技術の進化の方向や、社会がどのように変容していくか」という大きな流れは、”原理”を理解することでおおよそ先読みできるようになる。これが今日取り上げる「未来に先回りする思考法」(佐藤航陽)の説くところである。

 

「未来に先回りする思考法」(佐藤航陽)

著者・佐藤航陽さんは、大学時代に起業、代表取締役として2011年からAIを活用したアプリ収益化プラットフォーム事業を開始した。

2011年はiPhone 4Sが発売した頃。スマホがまさに加速度的に普及し始めるタイミングでこういった事業を立ち上げた(そしてその準備が出来ていた)というところからもやはり先見の明が感じられる。実際に「日本を救う起業家ベスト10」(フォーブス)や「日本を突破する100人」(AERA)にも選出されているとのことだ。

そんなポテンシャルを大いに見込まれている方が書かれたものであるが、中身は誰でも理解できるような分かりやすさで記されており、さっと読むことができる。

 

未来を先読みするために知るべき”原理”

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さて、タイトルになっている「未来に先回りする思考法」。これは先述の通り、技術革新やそれに伴った人間社会、生活様式などの変化を先読みするための考え方のことであり、昨今のあらゆるものの変化の速さに付いて行くため、身につけ意識し活用することが重要になるのは言うまでもない。

特にその速度が著しく、先行者利益という概念が大いに働いてくるIT業界の方、あるいは市場の移り変わりに敏感でいないと顧客の要望にベストパフォーマンスを返せないというマーケターの方々などは、その必要性を感じることが多いはずだ。

 

しかし、そんなに重要な「未来を予見する技」など存在するのだろうか。佐藤さんは”原理”を理解することで大きな流れは読み通せるようになると、本書全体を通して何度も主張する。

この”原理”を端的にまとめるのは非常に難しいのだが、何とかやってしまうなら「必要性の発端」とでも言えようか。

 

例えば、コンピューターの使用率は下降傾向にある一方で、スマホはもはや無くてはならない状況になりつつある——これは様々な調査結果などで見聞きしたり、実際の感覚として納得したりできる事実であろう。

何故このような変化が起きているのか。「便利だから」と言ってしまえばそれまでだが、もっと考えるとそれは「これまでコンピューターが解決していた必要性を、より手軽に、楽に満たすことができるから」である。

つまり、「実は人間が必要とする概念自体は過去から変わっておらず、それをより手軽に満たせる具体的な物体やサービスが、入れ替わり立ち替わり主権を握ってきただけ」というのがポイントなのだ。

 

「生きたい」という根本的な欲望に沿って社会が動く

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そして「必要性」という文字面だと分かりにくいかもしれないが、これはさらに突き詰めていくと「(本能的な)欲望」にたどり着く。

なぜコンピューターやスマホが生まれ普及したかというと、情報を取り扱うことが重要になったから。なぜ情報を取り扱うことが重要になったかというと、形のある物質より高速に売り買いできるから。なぜ高速に売り買いする必要があるのかというと、儲けに繋がるから。なぜ儲ける必要があるのかというと生きる必要があるから——

と、最終的には「生きたい、死にたくない」という人間の本能的な欲望にたどり着くわけである。国家というものが形成されたのも不思議なことではなく、生存戦略として。戦争中の技術開発の中でインターネットが生まれたのも、勝利して生き延びるため。

 

こうして必要性の発端、つまり物事の原理を見ていくと、今後どのような変化が起きていくか大きな流れが見えてくるようになる。より速くやり取りできるものが出来ればそちらへ、より楽に生きれるものが生まれればそちらへいくのは当然というわけだ。

なるほど、と素直に思う。人間の根本的な欲望は変わらないのだから、大まかな社会の進む方向も変わっていないはずという捉え方には驚くと共に、腑に落ちた。

 

強力な”眼鏡”になり得る1冊

本書は実は、すぐに実践に結びつきそうな内容ではない。実例は多く挙げられているが、語られている考え方を日常にまで落とし込むのは容易ではなさそうだ。

しかし、眼鏡を買い換えたときのような物事の新たな見え方を、じわじわと確実に与えてくれる良書だと感じたのも事実だ。前述のようにIT業界に住む人、マーケターなど市場の動きにはアンテナ全開でいたい人、そして僕のような「未来に先回りする思考」というタイトルにどういうわけか惹かれた人、この辺りの方々には何かタメになるであろう1冊だと思った。

なお、ちょうどこの記事執筆時はKindle版は60%オフのセール中。僕はセールでないときに買ってこれほど得した気分なので、セール中なら尚更オススメです。


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