生産性が低いと「自由な働き方」は一生できない——ちきりん『自分の時間を取り戻そう』を読んで

ちきりんさんの「自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方」を読みました。

いわゆる「生産性」について丁寧に語られた1冊。

特に、最近毎日のように耳にする「働き方改革」に結びついた内容にもなっており、「自分の働き方や生き方について最近考え直したくなってきた」、あるいは逆に「全く考えたことがなかった」という方たちには、面白い話があるのではと思います。

「自由な働き方」は、低い生産性では許されない

生産性というと「意識が高い」と思われがちな気もしますが、もはやそれは大半の人にとって意味のあるものであり、追求することで幸せを獲得できるのだと、本書は指摘します。

目標は高くないのになぜ生産性を上げる必要があるかといえば、生産性が低いと1日中忙しく働く必要が出てくるからです。ゆったりした生活を送ろうと思えば、生活に必要な家事、食べていくのに必要な仕事などをできるだけ高い生産性で=短い時間で終わらせ、残りの時間は家族と過ごしたり個人の趣味に使うというメリハリ型の生活スタイルを目指す必要があります。これが大半の人にとって、もっとも楽しく暮らせる(生産性の高い)生活スタイルなのです。

バリバリ仕事をしたい人だけでなく、ゆとりを持って人生を送りたい人にも、生産性の追求は重要だと。

上記の生活スタイルは、働き方改革が推進する「短時間労働」が実現できた際の”裏側”とも言えそうです。

働き方改革の報道は、ぼんやり聞いていると「とりあえず働く時間や場所を自由にする」といった話にも聞こえますが、現実はそう単純にはいかないでしょう。大半の企業が、これまで得られていた利益を多く減らしてまで、そういった改革を進めていくとは考えにくいからです。

ではどうなるか。働き方改革が掲げる働き方を本当に実現するには、今の仕事量を、できるだけそのまま短時間労働の時間内に収める必要がでてきます

残業を減らして家庭での時間を多く過ごしたいのなら、本来の業務時間に仕事を全て終わらせる。週休3日にして趣味の時間を増やしたいのであれば、4日でこれまでの5日分の仕事をこなす、といった形で。

自由には責任が要求されるごとく、柔軟な働き方には高い生産性が要求されるのです。

生産性の高いヒト・モノだけが求められていく時代に

もしかすると、ここまで読んで、「自分は今以上に自由になりたいとも特に思わないし、面倒だから今のまま働き続けられれば良いよ」と感じた方もいるかもしれません。

しかし、「そうもいかなくなるかもね、誰も抗えないスピードで社会全体が生産性を重視する流れになっていきそうだよね」というのが本書の主張

今後、私たちの暮らす社会では、これまでに経験したことがないほど速いスピードで、しかもあらゆる場面でこの高生産性シフトが進みます。

確実に、そして高い生産性で仕事をこなせる人間にだけ、仕事(そして一定のお金など)がどんどん集まっていき、生産性が低く、教育・コミュニケーション・金銭など様々なコストがかかって仕方がない人間からは、仕事が消えていく——。

しかもこの比較相手が、最近よく耳にするように、ヒトだけでなく、AIなどもこれからは含まれていくことになります。

働かなくて良くなったとき、僕らはどんな生き方を手に入れるのだろう

さらにもう1つ面白いのが、「そういう低生産性な人は、働いてもらう方が逆にコストがかかって迷惑だから、お金は渡して不自由ないようにしてあげて、働いてもらわなくて済むようにしようよ」という流れになるとする予測

社会が高生産性シフトを起こすというのは、極端に言えばこういうことです。生産性の低い人はどこかの段階で「あなたは働かなくていいです。あっ、もちろん生活費はお渡しします」と言われる時代がやってきてしまう。

つまるところベーシックインカムの話なのですが、自分はこれまで、単にふんわりと「皆が幸せになり得るはずという理由で何やら提唱されている」としか捉えていなかったので、このような合理的な背景があったのかと衝撃でした。

自由な働き方ができる状況を実現する前に、そもそも働くという行為の必要がなくなったら、自分は、人々は一体どんな思いをするのだろう。そしてそこに深く、また残酷に関わってくる「生産性」という概念の重要性とは…そんなことを考えさせられるようになりました。

おしまい

とにもかくにも、本書では一貫して生産性の重要性、そしてその概念を意識し高めていくことが幸せに繋がることが説かれていきます。

自分のような社会人1年目の方にも、もう社会に出てからそこそこ長いという方にも、日々の仕事だけでなく生活全体、そして未来をより有意義にするヒントとなる1冊だと感じました。読みやすい文体な点もおすすめです。是非。

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