D・カーネギー「人を動かす」は、当たり前のことを目次で言い尽くすだけの名著


D・カーネギー「人を動かす」を読みました。今回読んだのは厳密にはエッセンシャル版と呼ばれている文庫版で、完全版ではないのですが。

タイトル通り、「人を動かす」ために重要な心得を説いていく1冊です。(完全版の)初版は今からおよそ80年前にまでさかのぼる1936年に刊行されたようで、そこから改訂もされ、日本ではトータル500万部を突破しているんだとか。

評価も僕が観測している範囲では結構高く、Amazonのレビューや、あと周囲の人のブログとかでもなかなか絶賛されている。というか個人的な話になりますが、僕が今回読んでみるに至ったのも、下津さんという方が評価していたから、なのですが。

名著オブ名著である『人を動かす』

SNSでは「積極的に黙る」。|shimotsu|note


この本、面白いのが、「当たり前のことしか書いてないし、目次だけで全て言いたいこと言ってしまっているのに、確かに名著」という点。

どういうことか。

目次を見てみる

その目次ですが、Webに上がっているので、ざっくり引用してしまいますね。

目次
改訂にあたって
◇PART1 人を動かす三原則
1 盗人にも五分の理を認める
2 重要感を持たせる
3 人の立場に身を置く
◇PART2 人に好かれる六原則
1 誠実な関心を寄せる
2 笑顔を忘れない
3 名前を覚える
4 聞き手にまわる
5 関心のありかを見抜く
6 心からほめる
◇PART3 人を説得する十二原則
1 議論を避ける
2 誤りを指摘しない
3 誤りを認める
4 穏やかに話す
5 “イエス”と答えられる問題を選ぶ
6 しゃべらせる
7 思いつかせる
8 人の身になる
9 同情を寄せる
10 美しい心情に呼びかける
11 演出を考える
12 対抗意識を刺激する
◇PART4 人を変える九原則
1 まずほめる
2 遠まわしに注意を与える
3 自分の過ちを話す
4 命令をしない
5 顔をつぶさない
6 わずかなことでもほめる
7 期待をかける
8 激励する
9 喜んで協力させる

人を動かす / カーネギー,デール【著】〈Carnegie,Dale〉/山口 博【訳】 – 紀伊國屋書店ウェブストア

…どうでしょう。当たり前の説教ばかり書いているように思いませんか。

「人の立場に身を置く」「笑顔を忘れない」「名前を覚える」「誤りを認める」…おおよそ小学校、中学校で教えられてきたことばかりに思えますよね。

本書では、本当にこの内容しか語られていません。延々とこれらに関して、説教が続きます。この目次が、この本が伝えたいことの全てです。

では、この本は読む価値がないのか。

数多く語られる具体的なエピソードに大きな価値がある

目次で並べられた章の1つ1つは、筆者であるカーネギー氏が見聞した非常に具体的な実話エピソードと共に語られます

こんな感じの様式で。

  • 章タイトル(例:人の立場に身を置く)
  • 筆者が集めた超具体的エピソード
  • 筆者が集めた超具体的エピソード
  • 筆者が集めた超具体的エピソード
  • まとめ(章タイトルと同じ内容)

※厳密には、改訂の段階でカーネギー協会が、改訂時の社会情勢・習慣に合わせて、故カーネギー氏に代わってエピソードにも手を加えているようですが。

具体的なエピソード自体は、例えばこんな感じ。「命令をしない」の章。

「あれをせよ」「そうしてはいけない」などとは決して言わなかった。「こう考えたらどうだろう」「これでうまくいくだろうか」などといった具合に相手の意見を求めた。手紙を口述して書かせたあと、彼は「これでどう思うかね」と尋ねていた。彼の部下が書いた手紙に目を通して「ここのところは、こういう言い方をすれば、もっとよくなるかもしれないが、どうだろう」と言うこともよくあった。彼はいつも自主的に仕事をやらせる機会を与えたのだ。決して命令はせず、自主的にやらせる。そして、失敗によって学ばせた。

この具体的なエピソードが数多く記されている点に、この本の真価があります

ぶっちゃけ、この具体的なエピソードは、読むのが時々しんどいです。何というか、くどいんですよね。真面目に読んでいると、登場人物がカタカナというのもあって、いかにも翻訳された感じがある海外の小説をひたすら読んでいる大変さに悩まされます。

しかし、この具体的なエピソードを読み込むことで、「人を動かす」ために大事な考え方や振る舞いが、身に染み入るようにインストールされていくんです

「人の立場に身を置け!」と一言で説教されても、表面上で「はい」と感じて終わりです。具体的なエピソードがあることで、説教を具体的に踏まえるべきシーンが明確に脳内で描かれていく。それも数が多いので、多様なケースとして。これが重要であり、この本の真価なんですね


「人を動かす」。そう聞いて「全く無縁の話だね!」と言える人は、それほどいないのではないでしょうか。多かれ少なかれ、人を動かしたり、説得しないといけないケースは、おおよそ誰しもがあることではないでしょうか。

いわゆる自己啓発書に入る1冊だと思いますが、その中でも表面的でなく、じわじわと、重く深く効いてくる内容という印象を受けました。マネジメントとかに興味がある、悩みがある、役割がある人は特に必読です。


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